北風と太陽

カケスタ★たかひろ

2008年06月15日 16:46



ある日、北風は、自身満々で、太陽に言いました。


「やい、太陽!お前さんは、いつものどかな顔をしているけれども、

実はたいしたことないのだろう!」


太陽は、ただぽかぽかと、照らしながら言いました。


「そうだね。北風さんは、ほんとうにすごいと思うよ」


北風は言いました。


「そのゆとりのある態度が気に入らないんだ!よし、勝負をしよう!」


北風が地上に目をやると、ちょうどそのとき、

旅人が、コートを羽織って歩いていました。


「あの旅人のコートをどちらが早く脱がせるか、勝負だ!」


北風は、力んで言いました。

そして、力をこめて、強い風を巻き起こしました。


「吹き飛ばしてやる!」


太陽はニコニコしながら、北風を見ていました。

急に北風が強くなってきたので、旅人は言いました。


「おお、寒い、寒い。それに、コートが吹き飛ばされては大変だ。」


そして、コートをしっかりと着て、ボタンをしめました。

北風はそれを見て、ムッと来ました。


「せっかく俺がコートを脱がせようとしているのに、

抵抗しようって言うのか!」


あさはかな旅人に思い知らせてやろうと、北風はもっと強く吹きました。

旅人は、あまりの風の強さに、コートを手で握り締め、

襟元をマフラーのように、首に風が入らないように

さらに強く押さえつけました。


「なんて強い風だ...」


しばらく吹いた後、北風はあきらめて言いました。


「ふん。奴はコートを脱ぐ気がないようだ。

せっかく俺が親切に脱がしてやろうっていうのに。」


太陽は、ただポカポカと照らしていました。

北風は言いました。


「やい、太陽!お前さんも、あいつのコートを

脱がせようとしてみなよ。無理だと思うけど。」


「そうだね。僕はただ、ポカポカと照らすだけだから。

北風さんのように、物を直接動かす力は僕にはないんだ。」


太陽はポカポカと照らしながら言いました。

北風がどうなるものかと見ていると、旅人が言いました。


「おっ、風がやんできたみたいだな。」


旅人は、コートを握っていた手をゆるめました。

風が弱くなり、たいようがポカポカと照っていました。

旅人は、コートのボタンを外しました。


「なんだか、暖かくなってきたな。」


風もすっかりやんで、とてもいい陽気になってきました。


「いやぁ、こんなに暖かいなら、コートはいらないなぁ。」


旅人は、コートを脱ぎはじめました。

北風は恥ずかしくなって、どこかへ飛んでいってしまいました。

太陽は、ただポカポカと照りながら、

旅人のにこやかな顔を見てうれしく思いました。

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